独立系ソフトウェアベンダー(ISV)は、1つ以上のサードパーティ製ハードウェアまたはクラウドプラットフォーム上で動作するソフトウェア製品を、開発、マーケティング、販売する企業です。「独立系」とは、ハードウェアメーカーやクラウド事業者の一部門ではないことを指します。ソフトウェアの開発と販売を本業としています。単一製品のスタートアップから、幅広いポートフォリオを持つ大企業まで、規模はさまざまです。チャネルのエコシステムでは、ISVはベンダーであると同時に、他社のエコシステムに技術連携やマーケットプレイス掲載を通じて参加するパートナーでもあります。
製品の提供と流通のモデル
ISVは、特定のビジネス課題や技術課題を解決するソフトウェアを作ります。そのGTM(市場投入)モデルは、規模、ターゲット市場、製品の種類によって異なります。
製品の開発と提供
ISVのソフトウェアは、次のような形で提供されることがあります。
- SaaS(Software as a Service): ISVがアプリケーションをホストし、サブスクリプションでインターネット経由で顧客に届けます。
- オンプレミス・ソフトウェア: 顧客が自社のデータセンターやプライベートクラウドに導入し、運用します。
- クラウドネイティブ・アプリケーション: AWS、Azure、GCPなど特定のクラウドプラットフォーム上で動作するよう設計され、多くの場合、そのプラットフォーム固有のクラウドサービスを活用します。
- 組み込みソフトウェア: ERPやCRMプラットフォームのプラグインや機能のように、他社製品の内部で動くソフトウェアです。
流通モデル
ISVは複数のチャネルを通じて顧客に製品を届けます。
- 直販: ISV自身の営業チームが顧客に販売します。
- チャネルパートナー: リセラー、VAR(Value Added Reseller)、MSP、ディストリビューターが、ISVの製品を自社の顧客基盤に販売します。
- クラウドマーケットプレイス: ISVがハイパースケーラーのマーケットプレイス(AWS Marketplace、Azure Marketplace)に製品を掲載し、顧客が既存のクラウドアカウントを通じて購入できるようにします。
- OEMと組み込み: 別のベンダーがISVの技術を自社製品に組み込み、組み合わせたソリューションとして販売します。
- 技術エコシステム: ISVは補完的なプラットフォーム(CRM、ERP、セキュリティなど)と連携し、そのエコシステム内での共同販売や紹介の恩恵を受けます。
技術エコシステムにおける役割
ISVとのパートナーシップは、商業面より先に技術面が問われます。動く連携から共同の販売ルートへ進めないパートナーシップは、エンジニアリングのコストを生むだけで、売上は生みません。
Unifyr がISVとのパートナーシップをどう管理するかISVは、次のような理由から技術エコシステムの重要な構成要素です。
- イノベーションの源泉: ISVは新しいソフトウェアのカテゴリーや機能の起点となることがよくあります。特定の領域に特化した開発から生まれる専門的な機能は、プラットフォームベンダーがすべての領域で再現できるものではありません。
- エコシステムの価値: プラットフォームベンダーやハイパースケーラーにとって、その上で構築するISVが多いほど、顧客から見たプラットフォームの価値は高まります。ISVのアプリケーションが増えれば対応できるユースケースが広がり、プラットフォームの採用も進みます。
- チャネル収益: チャネルパートナーを通じて販売されるISV製品は、流通に関わる各参加者(ISV、リセラー、マーケットプレイス取引の場合はクラウド事業者)に収益をもたらします。
- 顧客の成果: 顧客は、既存の技術スタックと連携するベスト・オブ・ブリードのソリューションを使えるようになり、ISVのイノベーションの恩恵を受けます。
パートナーとしてのISV
パートナーエコシステムにおいて、ISVは取引を行うリセラーというより、テクノロジーパートナーとして参加することが多くあります。関係は連携を軸に築かれます。ISVの製品がベンダーのプラットフォームと連動し、共通の顧客に共同の価値を生み出します。この協業には、次のようなものが含まれることがあります。
- 共同の製品連携(API連携、データ共有、組み込みのワークフロー)
- 共通のターゲット層に向けた共同マーケティング
- 両社の製品がソリューションの一部となる案件での共同販売
- 組み合わせたソリューションを調達しやすくするマーケットプレイス掲載
提携モデル、プログラム設計、課題
ISVのエコシステムにおける提携モデル
| 提携モデル | 内容 | 収益の流れ |
|---|---|---|
| マーケットプレイス掲載 | ISVがハイパースケーラーまたはプラットフォームのマーケットプレイスに製品を掲載する | 顧客はマーケットプレイスを通じて支払い、ISVは受取額からマーケットプレイス手数料を差し引いた金額を受け取る |
| テクノロジーパートナーシップ | ISVがプラットフォームベンダーの製品と連携する。直接の取引はない | 収益は、連携の影響を受けたISV自身の販売から生まれる |
| OEM/組み込み | ISVが技術を別のベンダーに組み込み用としてライセンス供与する | ISVは、組み込みを行うベンダーからライセンス料またはロイヤルティを受け取る |
| リセラーチャネル | ISVが顧客と取引するチャネルパートナーを通じて販売する | リセラーがマージンを得て、ISVは割引後の価格を受け取る |
| 共同販売 | ISVとパートナー(多くはハイパースケーラー)が、ひとつのアカウントを共同で追う | ISVが案件を成約させ、パートナーは共同販売の貢献に対する報酬や紹介報酬を受け取る |
ISVプログラムの検討事項
ISVをエコシステムに迎え入れるベンダーやプラットフォームは、次の点を考慮すべきです。
- 連携のサポート: ISVが連携を構築し、維持するには、API、ドキュメント、サンドボックス環境、技術サポートが必要です。開発者体験が悪いと、ISVは競合プラットフォームへ流れてしまいます。
- ビジネスモデルの整合: ISVは独自の売上目標を持つ事業者です。過剰なマーケットプレイス手数料を課す、価格設定の自由を制限する、ISVの製品カテゴリーと競合するといったプラットフォームは、ISVパートナーを引き留められません。
- GTMの支援: ISVは、共同マーケティング、パートナーディレクトリへの掲載、共同販売へのアクセスから恩恵を受けます。こうした支援は、現実離れした売上のしきい値を満たさなければ受けられないものではなく、実質的で誰にでも利用できるものでなければなりません。
- 収益の帰属: ISVの連携がプラットフォームの採用を促進したなら、プラットフォームベンダーはその貢献を測定し、評価できるべきです。このデータが、ISVとの関係への継続的な投資を正当化します。
ISVがエコシステムで直面する課題
- プラットフォームへの依存: ひとつのプラットフォームに深く依存して構築すると、そのプラットフォームの方針が変わったときに、乗り換えコストと戦略上のリスクが生じます。
- マーケットプレイスでの見つけにくさ: マーケットプレイスに掲載されても、露出が保証されるわけではありません。目立つためには、マーケットプレイスのSEO、レビュー、共同販売の活動に投資する必要があります。
- 複数プラットフォームへの要求: エンタープライズ顧客は、ISVの製品が複数のクラウドやプラットフォームで動くことを期待しています。複数の連携を同時にサポートすると、エンジニアリングのリソースに大きな負担がかかります。
- プラットフォームとの競合: ハイパースケーラーやプラットフォームベンダーが、ISVの製品と重なる独自機能を作ることがあり、パートナーシップの中に競争上の緊張を生みます。