パートナーペルソナとは、ベンダーのエコシステムにおける特定のカテゴリーのパートナーを代表する、半ば架空のプロフィールです。マーケティングで使われるバイヤーペルソナと同じように、特定のパートナーの種類の特徴、動機、ビジネスモデル、ニーズを描き出します。ペルソナを用いると、パートナー開拓のメッセージ、パートナーオンボーディングのプログラム、育成(イネーブルメント)のコンテンツ、エンゲージメントの戦略を、パートナーの分類ごとの実情に合わせて調整しやすくなります。
パートナーペルソナの作り方
パートナーペルソナは、パートナープログラムに参加している(または参加しうる)組織の種類について、データと定性的な知見を組み合わせて作ります。
一般的に、各ペルソナには次の要素を含めます。
- 事業プロフィール: 企業規模、売上、従業員数、対応地域、注力する業界。同じ製品を扱っていても、2名のコンサルティング会社と500名のマネージドサービスプロバイダーは、根本的に別のパートナーです。
- ビジネスモデル: パートナーがどのように収益を得るか。リセラーはマージンを得て、紹介パートナーは紹介手数料を得ます。MSPは定期的なサービス収益を、SIer(システムインテグレーター)はプロジェクト単位の報酬を得ます。ビジネスモデルによって、何がパートナーを動かし、どのような支援が必要かが決まります。
- 意思決定の構造: パートナー組織の中で、ベンダープログラムへの参加、営業リソースの配分、認定への投資を決めるのは誰か。小規模な会社ではオーナーが決めることが多く、規模が大きくなると事業部長やアライアンスマネージャーが判断することもあります。
- 動機と目標: ベンダーとの関係から、パートナーが何を得たいと考えているか。一般的な動機には、売上の増加、新市場への参入、製品の差別化、技術力の強化、マーケティング支援などがあります。
- 課題と障壁: パートナーがより大きな成果を上げるのを妨げている要因。よく見られる障壁は、マーケティングの人員や予算の不足、技術的な深みの不足、商談期間の長さ、負担の大きいオンボーディング要件、マージンの薄さです。
- 好ましいエンゲージメントの方法: パートナーがベンダーとどのようにやり取りしたいか。手厚く関係を重視した関わりを好むパートナーもいれば、手間を最小限にして、ツールや資料に自分でアクセスすることを好むパートナーもいます。
ペルソナがプログラムの精度を高める仕組み
すべてのパートナーを同じように扱うプログラムは、どうしても大半のパートナーに十分な支援を届けられません。大手SIer向けに作られた画一的なオンボーディングは、小規模な紹介型の事業者には負担が重すぎます。リセラー向けのパートナー育成のコンテンツは、テクノロジー連携パートナーには的外れです。経験豊富なパートナー向けの案内文は、新規参加者を戸惑わせてしまいます。
ペルソナは、パートナーの母集団を共通の特徴とニーズを持つグループに分けることで、この問題に対処します。ペルソナを定義しておけば、どのプログラム要素も「この施策は、対象とするパートナーペルソナの役に立っているか」というひとつの問いで評価できます。
ペルソナは募集の精度も高めます。手当たり次第に網を広げて質が上がることを期待するのではなく、募集チームは特定のペルソナを狙い、その動機に響くメッセージを用意し、ペルソナの基準で候補者を絞り込めます。その結果、見込みパートナーのパイプライン(案件の見込み)の質が上がります。
ペルソナの例と実務での使い方
多くのパートナープログラムは、3〜7のペルソナを定義しています。3つ未満では分け方が大まかすぎて役に立たないことが多く、7つを超えると運用が難しくなるほど複雑になります。
B2B SaaSベンダーのペルソナの例には、次のようなものがあります。
- リージョナルVAR: 特定の都市圏に注力する、20名規模のリセラーです。4〜6社のベンダーの製品を扱っており、営業チームは関係づくりを重視します。シンプルな製品トレーニング、競合製品と比べるためのバトルカード、担当地域のリードが必要です。マーケティングの専任チームがなく、手厚い支援がなければキャンペーンを実行しません。
- ナショナルMSP: 複数の州にまたがって事業を展開する、150名規模のマネージドサービスプロバイダーです。ベンダーの製品を定額のサービスパッケージに組み込んで提供しています。技術的な深さ、連携のドキュメント、定期収益を支える価格モデルが必要です。自社のマーケティングチームを持っており、共同ブランドのアセットを重視します。
- ブティックコンサルタント: 大企業の顧客にテクノロジー戦略を助言する、個人または小規模な事務所です。自ら取引を行うことはありませんが、数千万円規模の購買判断に影響を及ぼします。経営層向けのコンテンツ、市場調査、ベンダーの製品ロードマップへのアクセスが必要です。金銭的なインセンティブよりも、信頼と関係性が重視されます。
- テクノロジーISV: ベンダーのプラットフォームと連携する独立系ソフトウェアベンダーです。共同ソリューションのためのAPIドキュメント、サンドボックス環境、共同マーケティングの支援が必要です。このタイプにとってパートナーシップの成否は、再販売の売上ではなく、連携機能の採用状況で測られます。
| ペルソナの要素 | 目的 | 元データ |
|---|---|---|
| 事業プロフィール | パートナーの事業環境を定義する | CRMの記録、企業属性データベース |
| ビジネスモデル | 経済的な動機を決める | プログラムの申請、パートナーアンケート |
| 意思決定の構造 | 募集とコミュニケーションの対象を決める | パートナーへのインタビュー、パートナー担当者(PAM/CAM)の観察 |
| 動機 | 価値提案とインセンティブ設計の形を決める | パートナー諮問委員会、アンケートデータ |
| 課題 | 育成とサポートのギャップを特定する | サポートチケット、解約分析、インタビュー |
| エンゲージメントの好み | アウトリーチのチャネルと頻度を決める | ポータルの分析、コミュニケーションへの反応データ |