エコシステムオーケストレーションとは、ベンダーのパートナーエコシステム全体にわたって、複数のパートナー類型、市場投入の進め方、共同の活動を調整し、管理することです。個々のパートナー関係を切り離して管理するのではなく、パートナー同士、ベンダーの直接の担当チーム、共有顧客の間でどのように相互作用するかに注目し、足並みのそろった成果を生み出します。目指すのは、エコシステムを二者間の関係がばらばらに存在する集まりではなく、まとまりのある一つのシステムとして機能させることです。
多様なパートナー類型と販売形態の調整
エコシステムオーケストレーションには、エコシステム全体を把握し、その中で活動を調整するための運用上の仕組みが必要です。主な構成要素は次のとおりです。
パートナーの分類(セグメンテーション)と役割の定義
すべてのパートナーが同じ役割を担うわけではありません。オーケストレーションは、各パートナー類型が何に貢献するのかを定義するところから始まります。
- テクノロジーパートナー:連携、共同イノベーション、共同の製品価値を提供します。
- リセラーとVAR(Value Added Reseller):顧客獲得と地域での販売の実行を担います。
- サービスパートナー(SIer(システムインテグレーター)、コンサルティング会社):導入、カスタマイズ、マネージドサービスを提供します。
- 紹介パートナー:取引を伴わずにリードを生み出します。
- ディストリビューター:物流、与信、下流のパートナー育成(イネーブルメント)を提供します。
各類型には、異なるインセンティブ構造、関与のモデル、成功の指標があります。オーケストレーションとは、こうした違いを調整し、パートナーが互いに衝突するのではなく、補完し合うようにすることです。
複数パートナーの案件の調整
多くのエンタープライズ案件には、複数のパートナーが関わります。たとえば、テクノロジーパートナーが価値提案を強める連携を提供し、サービスパートナーが導入を担い、リセラーが商取引の関係を持つといった形です。こうした複数パートナーの案件をオーケストレーションするには、次のものが必要です。
- 明確なルール・オブ・エンゲージメント:誰が案件を主導するか、貢献をどう分け合うかを定めます。
- 複数パートナーの貢献を支える案件登録システム
- 共同販売のプレイブック:営業サイクルの各段階で、パートナーがどう協力するかを示します。
- 共有のパイプライン(案件の見込み)の可視化:関係者全員が案件の状況と自分の役割を確認できるようにします。
マーケットプレイスとプラットフォームの調整
クラウドマーケットプレイスの重要性が高まるにつれ、オーケストレーションは、パートナーがマーケットプレイスのリスティングの中や横でどのように販売するかの管理にまで広がります。この管理には、プライベートオファーの調整、ハイパースケーラーとの共同販売の紹介の管理、マーケットプレイスの取引が関係するパートナーに正しく帰属されるようにすることが含まれます。
プログラム設計の整合
オーケストレーションはプログラムの水準でも行われます。ベンダーは、さまざまなパートナープログラム(リセラープログラム、テクノロジーパートナープログラム、サービスパートナープログラム、マーケットプレイスプログラム)が、連携して機能するように設計されていることを確認する必要があります。インセンティブの対立、テリトリーの重なり、互換性のない案件登録のルールは、現場レベルの調整では解消しきれない摩擦を生みます。
複雑なエコシステムにおける調整の必要性
単純なチャネルモデルから複雑なエコシステムへの移行は、調整の問題を生みます。リセラー、テクノロジーパートナー、SIerパートナー、ディストリビューター、マーケットプレイスの動きを抱えるベンダーには、同じ顧客に対応しうる複数のパートナー類型が存在します。オーケストレーションがなければ、次のようなことが起きます。
- パートナー同士の衝突:2社のパートナーが互いの存在を知らないまま同じ機会を追い、バッティング(チャネルコンフリクト)と無駄な労力を生みます。
- 顧客体験の分断:ベンダーの価値提案や導入アプローチで足並みがそろっていないパートナーから、顧客が一貫性のないメッセージを受け取ります。
- 収益の取りこぼし:複数のパートナー類型にまたがる機会について誰も所有権を持たない場合、案件がこぼれ落ちます。
- 投資の配分ミス:ベンダーはMDF(販促支援金)、育成のリソース、営業支援を、エコシステムが最大のリターンを生み出せる場所に集中させるのではなく、均等に配分してしまいます。
オーケストレーションは、エコシステムを相互につながったシステムとして捉え、意図的な調整を必要とするものとして扱うことで、こうした課題に対処します。
運用モデルと複数パートナーでの実行
オーケストレーションの運用モデル
| 機能 | オーケストレーションにおける役割 |
|---|---|
| チャネルオペレーション | 協業のルールを定め、案件登録を管理し、対立を解決する |
| パートナーマーケティング | パートナー類型をまたいで共同マーケティングを調整し、オーディエンスの重複やメッセージの不一致を避ける |
| パートナー育成 | 単一パートナーの認定だけでなく、複数パートナーによる販売シナリオを反映したトレーニングを提供する |
| 営業(直接・チャネル) | アカウントマッピング、パートナーの能力、顧客のニーズに基づき、案件ごとに適切なパートナーを関与させる |
| テクノロジーアライアンス | エコシステムに差別化された価値をもたらす連携ロードマップと共同イノベーションのプロジェクトを管理する |
| 経営層 | エコシステム戦略を定め、投資を配分し、業務レベルで解決できない対立を裁定する |
オーケストレーションの実例:複数パートナーの案件
ベンダーがセキュリティプラットフォームを販売するケースを考えてみましょう。
- テクノロジーパートナー(クラウドインフラ事業者)が、アカウントマッピングの作業を通じて、エンドポイント保護を必要とする共通の顧客にフラグを立てます。
- ベンダーの営業チームは、そのアカウントと既存の関係を持つリセラーと連携して、顧客に働きかけます。
- サービスパートナー(SIer)が加わり、導入と設定を担当します。
- 案件は、3社それぞれの役割への貢献が認められた状態で登録されます。
- ベンダーは共同提案を調整し、メッセージと価格の一貫性を確保します。
- 受注後は、サービスパートナーが継続的な導入を管理し、リセラーが更新に関する商取引の窓口であり続けます。
この種の複数パートナーの動きは、ベンダーが複数のパートナー類型をまたいで調整するためのシステム、プロセス、組織文化を備えている場合にのみ機能します。
効果的なオーケストレーションを支える要素
複数パートナーのエコシステムをオーケストレーションするには、単一の正となるシステムが必要です。パートナーのデータがスプレッドシートとCRMのカスタムフィールドに同時に散らばっていると、オーケストレーションは成り立ちません。
Unifyrがエコシステムをどうオーケストレーションするか- 統合されたデータプラットフォーム:すべてのパートナー類型、案件登録、エコシステムの活動を追跡する、単一の正となるシステム。
- パートナー同士の可視化:パートナーが互いを見つけ、アカウントの情報を共有し、案件で協調できるようにするツール。
- 貢献の割り当てモデル:単一パートナーへの帰属ではなく、複数パートナーの協業を評価する報酬とインセンティブの仕組み。
- 経営層のスポンサーシップ:オーケストレーションには投資と部門横断の足並みそろえが必要です。経営層の後ろ盾がなければ、各チームは自分たちのパートナーセグメントを個別に管理する、いわゆるサイロ化に陥りがちです。