チャネルとは、製品やサービスが提供企業から顧客へと届くまでの経路のことです。直接の営業チームやEコマースストアから、リセラーのネットワーク、ディストリビューターの流通網、マーケットプレイスへの掲載、アフィリエイトプログラムまで、すべてが含まれます。チャネルの実務家が「チャネル」と言うときは、多くの場合間接チャネルを指しています。つまり、ベンダーの製品を販売したり、流通させたり、販売に影響を与えたりする第三者組織のネットワークのことです。
直接・間接・ハイブリッドのモデル
ARRが5,000万ドルを超えるテクノロジーベンダーのほぼすべてが、ハイブリッドモデルで事業を運営しています。問うべきは「直接か間接か」ではなく、「どのセグメントにどの販売手法を当てるか」です。
製品を販売するすべての企業は、少なくとも1つのチャネルを使っています。どのチャネル(または複数のチャネル)を選ぶかによって、製品が顧客に届く経路、顧客との関係を誰が持つか、売上がベンダーに戻ってくる仕組みが決まります。
直接チャネル
ベンダーが顧客に直接販売します。具体的には次のとおりです。
- 大型案件をクローズするフィールドセールスチーム
- 問い合わせに対応するインサイドセールスチーム
- セルフサービスのEコマースストア
- ベンダーが運営するマーケットプレイスへの掲載
ベンダーは営業プロセス全体を自ら持ち、顧客体験を管理し、各取引の利益をすべて自社に残します。
間接チャネル
第三者の組織が販売プロセスに関わります。具体的には次のとおりです。
- 製品を仕入れて顧客に販売するリセラー
- 製品を集約してリセラーに供給するディストリビューター
- 適格なリードをベンダーに紹介する紹介パートナー
- デジタルチャネルを通じて製品を販促するアフィリエイトパートナー
- ベンダーの製品を組み込んだソリューションを構築するSIer
- 継続的なサービス契約の一環として製品を提供するマネージドサービスプロバイダー(MSP)
間接チャネルでは、販売への貢献に報いるため、ベンダーはパートナーにマージンを分配します(またはコミッションを支払います)。
ハイブリッドチャネル
ほとんどの成熟した企業は、直接チャネルと間接チャネルを同時に使っています。たとえばソフトウェアベンダーは、大企業のアカウントは自社の営業チームが直接担当し、中堅企業にはリセラーを、SMBのセルフサービスによる新規登録にはアフィリエイトを活用することがあります。この組み合わせでバッティング(チャネルコンフリクト)を起こさずに回していくことが、チャネル戦略の中心的な課題です。
チャネル選択が重要な理由
B2Bテクノロジー分野全体では、間接チャネルがIT支出全体の推定65〜75%を占めています。間接チャネルは、代替手段ではなく、いわば標準的な販売経路なのです。
チャネルの選択は、企業が下す最も影響の大きいゴーツーマーケット(GTM)の意思決定の1つです。売上の成長、顧客獲得コスト、市場カバレッジ、顧客との関係に影響します。
- リーチ: 自社の営業チームがカバーできるアカウント数には限りがあります。間接チャネルを加えれば、自社では効率よくリーチできないセグメントで既に関係を持っているパートナーを開拓し、市場カバレッジを広げられます。
- コスト構造: 直販には、人員、トレーニング、インフラへの固定的な投資が必要です。間接チャネルでは、そのコストの多くを変動費型に移せます。パートナーは成果が出たときに報酬を受け取る仕組みだからです。
- 市場投入のスピード: 既存のパートナーを通じて新しい地域や業界に参入するほうが、ゼロから直接の拠点を築くより一般に速く進みます。
- 顧客の選好: 多くの顧客は、ベンダーから直接ではなく、信頼できる地域のパートナーやマネージドサービスプロバイダー、マーケットプレイスを通じて購入することを好みます。
- エコシステム効果: 活発な間接チャネルは、ベンダーの成功に投資する組織のネットワークを生み出します。自社製品を軸に事業を築いたパートナーは支持者となり、ベンダーの影響力を自社のマーケティングの届く範囲以上に広げてくれます。
チャネル戦略と組織構造
チャネル戦略の判断
チャネル戦略を組み立てるには、互いに関連する問いに答える必要があります。
| 問い | 検討事項 |
|---|---|
| 直接、間接、ハイブリッドのいずれか? | 製品の複雑さ、案件の規模、顧客の選好、利用可能なパートナーエコシステム |
| どの種類のパートナーを選ぶか? | 取引型の幅広いカバーにはリセラー、エンタープライズ導入にはSI、継続サービスにはMSP、販売量の確保にはアフィリエイト |
| 何段階のティアにするか? | 1段階(ベンダーがパートナーに販売し、パートナーが顧客に販売)と2段階(ベンダーがディストリビューターに販売し、ディストリビューターがパートナーに販売)の比較 |
| チャネル中立か、チャネル優先か? | 直販チームがパートナーと競合するか、特定のセグメントではパートナーに任せるか |
| 競合をどう管理するか? | 案件登録、テリトリーの割り当て、直接チームと間接チームの間のルールオブエンゲージメント |
組織機能としてのチャネル
多くのテクノロジー企業で「チャネル」と言えば、販売経路だけでなく、間接販売を管理する組織機能を指します。この機能は通常、次の要素で構成されます。
- チャネルリーダーシップ(チャネル担当VP、チャネルチーフ):戦略を策定し、間接売上の目標に責任を持ちます。
- パートナー担当者(PAM/CAM):個々のパートナーとの日常的な関係を管理します。
- パートナーマーケティングチーム:パートナー向けおよびパートナーを通じた需要創出プログラムを作成します。
- チャネルオペレーションチーム:パートナーのオンボーディング、案件登録の処理、インセンティブ管理、レポートを担当します。
- パートナー育成(イネーブルメント)チーム:パートナー向けのトレーニング、認定、販売ツールを開発します。
チャネルパフォーマンスの測定
最も頻繁に追跡される指標であるパートナー経由の売上は、同時に最も操作されやすい指標でもあります。アトリビューションのデータは確定的なものとしてではなく、方向性を示すものとして扱ってください。
チャネルの健全性を評価する際によく使われる指標には、次のようなものがあります。
- 全売上に占める、パートナー経由およびパートナーが影響した売上の割合
- 売上を生んでいる稼働パートナー数と、開拓したパートナー総数との比率
- パートナー1社あたりの平均売上
- 案件登録の件数と成約率
- パートナー開拓から最初の成約までの期間
- 各ステージのパイプライン(案件の見込み)へのチャネルの貢献度
健全なプログラムでは、全売上の30〜50%が、パートナー経由とパートナーが影響した案件を合わせたものから生まれています。
「チャネル」の範囲は広がり続けています。従来の再販契約は、テクノロジーパートナーシップ、クラウドマーケットプレイスでの取引、エコシステムを通じた販売手法と並び立つようになりました。こうしたモデルが増えるにつれ、チャネル機能は流通管理というより、エコシステム管理の色合いを強めています。