オーバーレイ型営業支援(オーバーレイセールス)は、担当地域ごとのアカウントチームを、専門の営業担当者が特定の案件に限って支援する人員配置とカバレッジのモデルです。支援に入る担当者は、そのアカウントに対する直接の販売目標を持ちません。主担当のアカウントオーナーにはない製品知識、業界知識、パートナー固有のスキルを持ち込むのが役割です。幅広いポートフォリオを販売している組織や、パートナーを介した取引に大きく依存している組織で多く見られます。
オーバーレイモデルの仕組み
一般的なオーバーレイ体制では、主担当のアカウントエグゼクティブ(AE)が顧客との関係を所有し、アカウントの販売目標を担います。製品ライン、ソリューション領域、パートナーとの取引形態などで、より深い専門知識が必要な案件になると、AEがオーバーレイの専門担当者を呼び入れます。専門担当者は商談に同席してビジネスケースの作成を支援し、技術面や戦略面の議論を主導することもあります。案件が成約したら、事前に定めた報酬ルールに沿って実績を配分します。
オーバーレイの役割は、いくつかの形で現れます。
- 製品スペシャリスト: 幅広いベンダーのポートフォリオのなかで、特定のSKUやソリューションカテゴリーを担当します。
- パートナー連携型オーバーレイ: 特定のパートナーやアライアンスが関わる案件を担当します(例:ハイパースケーラーのマーケットプレイスに対応するISV向けのオーバーレイ)。
- 業界スペシャリスト: ヘルスケア、金融サービス、製造業など、業界固有の知識を持ち、業界への深い理解が求められる案件を担当します。
- テクニカルオーバーレイ: 複雑な構成、PoC(概念実証)、連携計画を支援するソリューションエンジニアやアーキテクトです。
オーバーレイ担当者は、アカウントオーナーに取って代わるものではありません。特定の案件の期間中はチームを補強し、その後は自身のスキルを必要とする次の案件へ移ります。
オーバーレイ型の支援を採用する理由
オーバーレイ体制では、販売目標を持つ担当者がひとつの案件に2人つきます。この体制が強みになるか摩擦になるかは、案件の途中ではなく、案件の前に実績の算入ルールが決まっていたかどうかで決まります。
Unifyrによるオーバーレイ体制の調整方法オーバーレイモデルが生まれたのは、1人の担当者がベンダーの販売するすべての領域で専門知識を保ち続けることはできないからです。製品ポートフォリオが広がり、パートナーエコシステムが複雑になるほど、あらゆる案件を1人のジェネラリストのAEに任せるのは現実的ではなくなります。オーバーレイの専門担当者は、アカウントの所有権を分散させることなく、この課題に対処します。
チャネル組織では、次のような場合にオーバーレイが特に有効になる傾向があります。
- ベンダーが戦略的パートナーとの共同販売を加速させたいものの、アカウントの担当を変えたくない場合。
- 案件に、パートナーの技術スタック、マーケットプレイスへの掲載プロセス、連携要件に関する知識が求められる場合。
- ベンダーが新しい市場セグメントに参入し、既存の担当地域のカバレッジに業界の専門知識を重ねる必要がある場合。
オーバーレイがなければ、AEには案件を前進させる専門知識が足りず、案件が停滞しがちです。あるいは、案件がまったく別のチームに回され、関係を誰が所有するのかが曖昧になります。
オーバーレイ体制の効果的な構築
オーバーレイセールスを効果的に活用している組織には、いくつかの共通したパターンがあります。
- 明確な関与ルール: オーバーレイがいつ関わるのかを決めておくことが欠かせません。トリガーには、案件規模のしきい値、特定の製品ライン、パートナーが関わるパイプライン(案件の見込み)などがあります。明確な基準がないと、オーバーレイが多くの案件に引き込まれて手が回らなくなるか、待機したまま活用されなくなります。
- 報酬の整合: オーバーレイ担当者には、ある案件を別の案件より優先する理由が必要です。最も一般的な方法は「二重算入」、つまりAEとオーバーレイの双方が販売目標に対する実績を得る仕組みです。ただ、オーバーレイが関わった売上に対して販売奨励金(SPIFF)やボーナスプールを使う組織もあります。
- CRM上での可視化: すべてのオーバーレイ案件は、アカウントオーナー、オーバーレイの専門担当者、関与するパートナーが同じステージと次のアクションを持つ、同じ案件情報を見られるように追跡すべきです。追跡が分断されていると、アプローチが重複したり、見込み客を混乱させたりします。
- キャパシティ管理: オーバーレイのリソースは多くのアカウントで共有されるため、プログラムリーダーは稼働状況を監視する必要があります。価値の高い案件に確実に支援が行き届き、オーバーレイが薄く広がりすぎないようにするためです。
例:パートナー連携型オーバーレイの取り組み
ベンダーがクラウドベンダーと戦略的アライアンスを結び、そのクラウドパートナーのインフラストラクチャが関わる10万ドル超のすべての案件に、オーバーレイ担当者を割り当てています。AEが営業サイクル全体を進め、オーバーレイ担当者は共同でのソリューション提案を担当します。また、パートナーの営業チームと調整しながら、マーケットプレイスでの取引を管理します。AEとオーバーレイ担当者の双方が、販売目標に対する実績を全額得ます。
オーバーレイセールスと専任のパートナー営業の違い
専任のパートナー営業モデルでは、担当者はパートナー経由の案件、またはパートナーが影響した案件に専任として割り当てられ、開始から終了まで案件を所有します。一方、オーバーレイモデルでは、オーバーレイ担当者は支援はするものの、アカウントとの関係は所有しません。専任の担当者はパートナーに関する知識を深く積み上げられる一方、オーバーレイは広い担当地域に対して、より柔軟なカバレッジを提供できます。両方のアプローチを併用する組織も多く、トップティアのアライアンスには専任の担当者を、より広いパートナーエコシステムにはオーバーレイを割り当てています。