パートナー起点の営業(ニアバウンド)は、GTMの考え方の一つで、パートナーエコシステムとの関係やデータを、売上を生み出す主要な推進力と位置づけます。インバウンドやアウトバウンドの活動と並行して、あるいはその中間で成り立つ考え方です。前提にあるのは、購買者は既に付き合いのある人や企業を信頼しているということです。そのため、信頼できるパートナーの影響を見込み客に及ぼすほうが、コールドアプローチや相手からの問い合わせを待つよりも効果的だと考えます。
エコシステムとの関係を活かした売上づくり
ニアバウンドは、どの企業も、ターゲットとなる購買者と関係が重なるパートナー、顧客、隣接するベンダーからなるエコシステムの中にあるという原則に基づいています。この戦略は次のように進めます。
- エコシステムのマッピング。 組織は、ターゲットアカウントとすでに関係を持つパートナー、テクノロジーベンダー、サービス事業者、顧客の推進者を特定します。
- データの共有。 アカウントマッピングやエコシステムの分析ツールを使って、組織は見込み客のうち、どれがパートナーの顧客である(またはパートナーと関わりがある)かを明らかにします。この重なりのデータが、パートナーの影響が及んでいる「ニアバウンド」のアカウントを示します。
- 影響の活性化。 コールドに働きかける(アウトバウンド)のでも、相手が見つけてくれるのを待つ(インバウンド)のでもなく、組織はパートナーとの関係を活かして紹介を得たり、共同販売を行ったり、信頼できるチャネルを通じて購買者の判断に影響を与えたりします。
- 複数の活動の調整。 ニアバウンドはインバウンドやアウトバウンドに代わるものではなく、その上に重ねて機能します。ターゲットアカウントへのアウトバウンドのキャンペーンは、パートナーがすでにソリューションを紹介している場合にずっと効果的です。インバウンドのリードも、購買者の評価段階でパートナーがベンダーを裏付けると、より速く成約に至ります。
相互につながった市場での信頼に基づく営業
B2B購買者は、従来のアウトバウンドの手法への抵抗感を強めています。コールドメールの返信率は低く、コールも次第に選別されるようになっています。一方、インバウンドの戦略は、購買者が能動的にソリューションを探すことに依存しているため、ベンダーはそのタイミングに影響を与えられません。
ニアバウンドは、購買者がすでに信頼しているパートナーを通じて働きかけることで、この2つの制約に対処します。パートナーによる推薦(明示的なものでも暗黙のものでも)は購買者の抵抗感を和らげ、評価のプロセスを短縮します。
この考え方は、B2Bマーケットの運営方法がより広く変化していることも映し出しています。テクノロジーのエコシステムは密接につながっており、購買者は単一の製品を単独で買うことはほとんどありません。すでに信頼しているコンサルタント、SIer、テクノロジーパートナーが推奨する、統合されたソリューション群を購入するのです。ニアバウンドは、こうしたエコシステムとの関係を副次的なものとして扱うのではなく、市場への投入の方法として活かす実践を体系化したものです。
戦術、比較、導入
購買者の段階ごとのニアバウンド
| 購買者の段階 | ニアバウンドの施策 |
|---|---|
| 認知 | パートナーが、自社のコンテンツ、会話、アドバイザリー業務の中でベンダーに言及する |
| 比較検討 | パートナーの営業担当者が、そのカテゴリーのソリューションを比較検討している見込み客にベンダーを紹介する |
| 意思決定 | パートナーが参考事例を提供したり、ベンダーの主張を裏付けたり、評価の過程で共同でプレゼンテーションを行ったりする |
| 販売後 | パートナーが導入サービスや補完製品を提供し、関係を強化する |
ニアバウンド、インバウンド、アウトバウンドの比較
| 観点 | インバウンド | アウトバウンド | ニアバウンド |
|---|---|---|---|
| 主導者 | 購買者がベンダーを見つける | ベンダーが購買者に働きかける | パートナーがベンダーと購買者をつなぐ |
| 初回接触時の信頼度 | 中(購買者が情報を求めた) | 低(求められていない接触) | 高(信頼できる第三者による紹介) |
| 拡張性 | 高い(コンテンツは拡大しやすい) | 中(営業担当の活動が必要) | エコシステムの広がりに依存する |
| タイミングの主導権 | 低い(購買者次第) | 高い(ベンダーが接触のタイミングを選ぶ) | 中(パートナーの関与次第) |
| データへの依存 | Webサイトの分析、コンテンツへの反応 | コンタクトデータベース、インテントデータ | エコシステムの重なりのデータ、パートナーのCRMデータ |
ニアバウンドの取り組みの導入
ニアバウンドを導入する組織は、一般的に次のような段階を踏みます。
- エコシステムの重なりを特定する: アカウントマッピングを使って、どのパートナーがターゲットアカウントとの関係を持っているかを明らかにし、複数のパートナーが既にアクセスできているアカウントを優先します。
- パートナーを支援する: 紹介を行うために必要な文脈(ターゲットアカウントのリスト、メッセージングの枠組み、依頼する行動の明確な説明)をパートナーに提供します。
- 相互の価値を生み出す: ニアバウンドは双方が利益を得るときに機能します。パートナーに自社のアカウントへの紹介を求めるなら、同じことを提供する姿勢を示します。アカウントマッピングは、双方向の機会を浮き彫りにするべきです。
- パートナーの影響を測定する: パートナーの紹介や推薦が役割を果たした案件を追跡します。このデータは、ニアバウンドへの投資を裏づけ、どのパートナー関係が最も多くのパイプライン(案件の見込み)を生み出しているかを明らかにします。
- 既存の活動に組み込む: ニアバウンドのシグナル(パートナーがこのアカウントにアクセスできる)は、アウトバウンドチームの優先順位づけに反映させるべきです。また、ニアバウンドのデータを持つインバウンドのリードには、パートナーとの連携を行うようフラグを付けるべきです。
批判と限界
ニアバウンドには懐疑的な意見もあります。よく挙げられる批判は次のとおりです。
- 目新しさがない: パートナーの影響による販売は、共同販売、アライアンス販売、エコシステム販売といった名称で数十年前から存在していました。ニアバウンドは、なじみのある概念を新しい用語で言い換えただけだという指摘です。
- 拡張しにくい: パートナー関係を活かすには調整が必要で、広告の配信やメール送信ほど容易には拡大できません。この取り組みは人間関係に依存するためです。
- 効果測定の難しさ: パートナーの影響による増分の効果を測るのは困難です。パートナーの紹介があったから成約したのか、紹介がなくても成約していたのかを判断するのは、難しい課題です。
いずれも妥当な懸念です。ニアバウンドという考え方の価値は、目新しさよりも、その枠組みにあります。エコシステムとの関係を偶然に任せるのではなく、体系的に活性化させるための語彙と枠組みを組織に与えてくれるのです。