ハイパースケーラーは、コンピューティング、ストレージ、ネットワークのリソースを世界規模で運用するクラウドインフラベンダーです。一般には Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)を指しますが、Oracle Cloud や Alibaba Cloud などの事業者を含めることもあります。ハイパースケーラーは世界の数十のリージョンにデータセンターを構築・運用し、他社がアプリケーションを作り、サービスを提供し、ワークロードを動かすための基盤インフラを提供しています。
スケール、弾力性、サービスの幅
ハイパースケーラーは、サービスとしてのインフラ(IaaS)、サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)、そして従量課金またはコミットメント型で利用される、より高度なサービス群(データベース、AI/ML、分析、セキュリティ)を提供しています。その規模があるからこそ、小規模なクラウドベンダーには真似のできない経済性と技術力が実現されています。
- グローバルなデータセンターの展開: 複数の大陸にまたがる数十のリージョンとアベイラビリティゾーンにより、顧客はワークロードをエンドユーザーの近くにデプロイできます。
- 弾力的なキャパシティ: コンピューティングとストレージの資源を数分で増減でき、顧客が物理的なハードウェアを用意したり所有したりしなくても、需要の急増を吸収できます。
- サービスの幅: コンピューティング、ストレージ、ネットワーク、データベース、機械学習、IoT、開発者ツール、セキュリティにまたがる数百のサービスがあります。
- マーケットプレイスの基盤: ISVやパートナーが、ハイパースケーラーの顧客基盤に向けてソリューションを掲載、販売、提供するためのデジタルストアです。
- パートナープログラム: テクノロジーパートナーとサービスパートナーを認定し、インセンティブを与え、共同販売を行う正式な制度です。
ISVとパートナーにとってのチャネル戦略の見直し
ハイパースケーラーとの関係は、実際には複数の関係が同時に存在するものです。マーケットプレイスへの掲載、現場のアライアンス、技術的な連携がそれぞれ別に存在し、双方で担当者も異なります。こうした複数の関係をひとつの関係として扱うことが、停滞の原因になります。
Unifyr でハイパースケーラーとのアライアンスを管理する方法ハイパースケーラーは、技術エコシステムを再編し、チャネル戦略に直接影響を与えています。
ISVと技術ベンダー向け
ハイパースケーラーは、プラットフォームであると同時に、流通チャネルであり、共同販売のパートナーでもあります。ハイパースケーラーのインフラ上で動作するISVは、そのマーケットプレイスに掲載し、顧客基盤にアクセスし、現場チームと共同販売することもできます。そのため、ハイパースケーラーとの関係は多面的になります。
- プラットフォームへの依存: 製品がAWS上で動いているなら、ベンダーのインフラコスト、性能特性、コンプライアンス体制は、そのハイパースケーラーと結びついています。
- マーケットプレイスでの流通: ハイパースケーラーマーケットプレイスに掲載すると、すでに調達の関係とクラウド予算を持つ何千もの顧客にアクセスできます。
- 共同販売プログラム: AWS ISV Accelerate や Microsoft の共同販売など、ハイパースケーラーが運営する正式な共同販売プログラムは、パートナーの営業チームとハイパースケーラーの現場組織をつなぎます。
- コミットメント額の消化: クラウドのコミットメント契約を持つ顧客は、そのコミットメントをISVからのマーケットプレイス購入に充てられることが多く、マーケットプレイス経由の購入が財務的に魅力的になります。
チャネルパートナー向け
ハイパースケーラーは、従来のチャネルパートナーにとって、機会と課題の両方をもたらします。
- 新たな収益源: パートナーは、ハイパースケーラーのプラットフォーム上に、マネージドサービス、コンサルティング事業、導入サービスを構築できます。
- 認定の要件: ハイパースケーラーは、パートナー組織に認定の取得と習熟度の維持を求めます。そのため、継続的なトレーニングへの投資が必要になります。
- マーケットプレイスとの競合: ソフトウェア取引がハイパースケーラーのマーケットプレイスを通じて流れるようになると、従来のリセラーは、サービスで付加価値を加えない限り、中間業者としての役割を失うリスク(ディスインターミディエーション)に直面します。
関与のモデルと戦略上の検討事項
ハイパースケーラーのパートナーエコシステム
主要なハイパースケーラーはそれぞれ、階層化されたパートナーエコシステムを運営しています。
| ハイパースケーラー | 主要なパートナープログラム | マーケットプレイス |
|---|---|---|
| AWS | AWS Partner Network(APN)、ISV Accelerate、SIアライアンス | AWS Marketplace |
| Microsoft Azure | Microsoft AI Cloud Partner Program、共同販売プログラム | Azure Marketplace/AppSource |
| Google Cloud | Google Cloud Partner Advantage | Google Cloud Marketplace |
ハイパースケーラーとの関わり方
ベンダーとパートナーは、いくつかの取り組みを通じてハイパースケーラーと関わります。
- 構築: ハイパースケーラーのプラットフォーム上で動くように製品を設計し、最適化します。ネイティブサービスの活用、性能ベンチマークの達成、技術検証への合格が必要になることもあります。
- 掲載: 適切な価格モデル(SaaS、AMI、コンテナ、プロフェッショナルサービス)で、製品をハイパースケーラーのマーケットプレイスに公開します。
- 共同販売: ハイパースケーラーの営業チームと、共同の案件を登録します。ハイパースケーラーのアカウントエグゼクティブが案件に関与すると、受注率と案件規模は上がる傾向があります。
- 影響力: ハイパースケーラーの戦略上の優先事項(例:AI、データのモダナイゼーション、セキュリティ)に沿うことで、ハイパースケーラーの市場投入の取り組みのなかで、より高い注目を得られます。
戦略上の検討事項
- マルチクラウドという現実: ほとんどのエンタープライズ顧客は、複数のハイパースケーラーを利用しています。複数のクラウドに対応するベンダーやパートナーは、単一のハイパースケーラーの顧客基盤に対象市場を限定せずに済みます。
- マーケットプレイスの経済性: ハイパースケーラーのマーケットプレイスは通常、取引額の一定割合を手数料として課します(共同販売の契約におけるISVでは一般に3〜5%、標準の掲載ではより高い率)。この費用は、価格設定とマージンのモデルに組み込む必要があります。
- 共同販売への投資: ハイパースケーラーから積極的な共同販売の関与を得るには、継続的な投資が必要です。専任のアライアンスマネージャー、共同のソリューションアーキテクチャ、共有できる顧客の成功事例が求められます。見返りは大きくなり得ますが、自動的に得られるものではありません。
- 依存関係の管理: 単一のハイパースケーラーと深く連携すると、そのハイパースケーラーが価格を変えたり、ベンダーの製品カテゴリーと競合したり、パートナーシップの優先度を下げたりした場合に、戦略上のリスクが生じます。複数のハイパースケーラーに選択肢を残しておけば、このリスクは軽減されます。