共同パイプラインとは、ベンダーと1社以上のパートナーが一緒に追いかけている、共有の商機(案件の見込み)の集まりを指します。パートナーが単独で販売する通常のパートナーパイプラインとは異なり、共同パイプラインは、案件の推進と成約をチームとして積極的に協力して進めることを前提としています。
共有の商機リストの作成
共同パイプラインは、ベンダーとパートナーの双方が特定のアカウントや商機を共同で追うことに合意したときに作られます。その過程は、通常次の段階を経て進みます。
- 商機の特定。 双方がそれぞれのアカウントベースを確認します。多くの場合、アカウントマッピングを使い、どちらか一方だけで販売するより共同で取り組むほうが効果的な見込み客を見つけ出します。
- 見極め。 各商機を、案件規模、購買側の準備状況、共同の価値提案との適合性などの基準で精査します。双方が資源を投じると約束した商機だけが、共同パイプラインに入ります。
- パイプラインの追跡。 商機は共有のシステムに記録するか、CRM間で同期します。各案件には、誰が商機を創出したか、どのパートナーが関わっているか、現在の段階、受注予定日などのメタデータを付けます。多くのベンダーは、この追跡を正式なものにするために案件登録を使います。
- 共同での推進。 双方の営業担当者が、アカウント戦略、ヒアリング、デモ、提案で協力します。役割は強みに応じて分担します。たとえば、ベンダーが製品の位置づけを主導し、パートナーが顧客との関係を主導する、といった形です。
- 報告とレビュー。 双方の組織は定期的にパイプラインのレビューを行い、案件の健全性を評価し、停滞した商機を整理して、次のアクションについて認識を合わせます。
需要予測と説明責任の利点
ベンダーがパートナー経由の案件やパートナーが影響した案件だけに頼っている場合、パートナーが実際に何に取り組んでいるかが見えないことがよくあります。共同パイプラインは、商機の集まりを明確かつ共有のものにすることで、この状況を変えます。
ベンダーにとって、共同パイプラインは、パートナーが生み出す売上について、より確かな需要予測をもたらします。案件登録が上がってくるのを待つ必要はなく、チャネル担当者はパートナーが何に取り組んでいるかをリアルタイムで把握し、最も効果が出る場所に支援を振り向けられます。
パートナーにとって、共同パイプラインへのアクセスは、ベンダーのリソースが自社の案件に向けられることを意味します。ソリューションエンジニアによる支援、マーケティング面での後方支援、そして本来なら直販に回されていたはずの経営層のスポンサーシップなどが含まれます。
このモデルは、双方に説明責任ももたらします。商機を共同で追跡していれば、どちらか一方が密かに案件を停滞させることはできません。また、パイプラインのレビューによって案件を前に進め、障害を早い段階で明らかにできます。
シナリオと実行の進め方
共同パイプラインは、ベンダーとパートナーの双方が購買側と直接の関係を持つ共同販売の取り組みで最も一般的です。典型的なシナリオは次のとおりです。
- テクノロジーアライアンス: 補完的な製品を持つ2社のソフトウェアベンダーが、同じ見込み客を共同で狙い、両社のソリューションをひとつの提案にまとめます。
- SIer主導の取り組み: SIer(システムインテグレーター)が顧客との関係と導入を主導し、ベンダーがプラットフォームを提供します。双方が商機を追跡します。
- 戦略的なパートナープログラム: ベンダーが上位のパートナーを共同販売のために指定し、共有のパイプラインをパートナーシップの条件として求めます。
- マーケットプレイスでの共同販売: クラウドマーケットプレイスの取引で、ベンダーとクラウド事業者が、それぞれのシステムを通じて同じ案件を追跡します。
共同パイプラインの効果的な構築
| 実践事項 | 説明 |
|---|---|
| 共通の見極め基準 | 商機がパイプラインに入る前に、適格な商機の定義を双方で合意しておく |
| 役割の明確化 | 各案件について、誰が関係を主導し、誰が技術支援を行い、誰が調達を担当するかを文書で定める |
| 定期的なパイプラインレビュー | 週次または隔週で双方が案件の進捗を確認し、障害に対処する |
| 報告の統合 | 組織間でCRMのデータを連携させ、どちらも古い情報をもとに動かないようにする |
よくある落とし穴
- 水増しされたパイプライン: 件数を多く見せるために、パートナーや担当者が確度の低い案件を加えてしまうことがあります。厳格な見極めのゲートを設けると、防ぎやすくなります。
- 負担の不均衡: 一方が資源を投じる一方で、もう一方が受け身のままになります。役割を文書化し、レビューの定例を設けることで、双方の関与を保てます。
- 二重計上: 同じ商機が、直販のパイプラインとパートナーのパイプラインの両方に現れます。重複排除のルールと案件登録の手続きでこの重なりを解消し、明確なルール・オブ・エンゲージメントがバッティング(チャネルコンフリクト)を防ぐのに役立ちます。