パートナー経由の案件とは、ベンダー自身の営業部門やマーケティングチームではなく、チャネルパートナーが見つけて起点となった営業機会です。パートナーが見込み客を見つけ、案件として見極め、パイプライン(案件の見込み)に持ち込みます。ベンダーが起点となり、パートナーが商談の前進や成約に貢献する「パートナーが影響した案件」とは別のものです。
パートナー経由の案件のライフサイクル
パートナー経由の案件は、一般に次の順序で進みます。
- 発掘:パートナーは、自社の営業活動、既存顧客との関係、マーケティング活動を通じて見込み客を見つけます。ベンダーには、そのアカウントとの事前の接点がありません。
- 登録:パートナーは、ベンダーのパートナーポータルから案件登録を申請し、その機会を確保します。見込み客の会社名、想定される案件規模、想定スケジュールなどを入力します。
- 検証:ベンダーのチャネルチームが申請内容を確認し、その機会が新規であること(ベンダーの直販のパイプラインにまだ存在しないこと)と、基本的な選定基準を満たしていることを確かめます。
- 承認と保護:承認されると、パートナーには一定期間の案件保護が与えられます。案件保護により、同じアカウントでの他のパートナーやベンダーの直販チームとのバッティング(チャネルコンフリクト)を防ぎます。
- 実行:パートナーが営業プロセスを進めます。必要に応じて、ベンダーのプリセールス支援や技術リソースを活用します。
- アトリビューション:案件が成約すると、売上はパートナー経由として計上されます。この区分は、パートナーへの報酬、ティアの対象条件の判定、プログラムのレポートに影響します。
パートナー経由のパイプラインが持つ戦略的な意味
パートナー経由の案件は、チャネルパートナープログラムが生み出す最も価値の高い成果の一つです。既存の需要に応えるだけでなく、パートナーがベンダーに代わって新たな事業を積極的に生み出していることを示すからです。戦略上の重要性は次の点にあります。
- 新規のパイプライン:ベンダーの直販チームが独自には接点を持てなかったアカウントや購買部門に届くため、ベンダーの獲得可能な市場(TAM)が広がります。
- 顧客獲得コストの低減:見込み客の発掘と初期の選定をパートナーが負担するため、ベンダーの顧客獲得コストは、通常、直販の案件より低くなります。
- パートナーのコミットメントの指標:案件を発掘するパートナーは、ベンダーの製品に深く投資しています。この水準の関与は、長期の継続や、パートナーシップを通じた顧客生涯価値(LTV)の向上と相関する傾向があります。
- プログラムの健全性の指標:パートナー経由の案件の件数と成約率は、チャネルプログラムが増分の売上を生み出しているのか、それとも、ベンダーがいずれにせよ獲得していた受注を処理しているだけなのかを判断する、最も信頼性の高い指標の一つです。
パートナー経由の案件の計測
正確に計測するには、明確なアトリビューションのルールと一貫したデータ管理が欠かせません。主な指標は次のとおりです。
| 指標 | 定義 |
|---|---|
| パートナー経由の案件数 | パートナーが機会を発掘した、承認済みの案件登録の総数 |
| パートナー経由のパイプライン金額 | 未クローズのパートナー経由の案件の合計金額 |
| パートナー経由の成約率 | パートナー経由の案件のうち、受注に至った割合 |
| 成約までの期間 | 直販の案件やパートナーが影響した案件と比べた、パートナー経由の案件の平均的な営業サイクルの長さ |
| パートナー経由の売上比率 | 会社全体の売上に占める、パートナー経由で受注した売上の割合 |
業界やGTMモデルによって目安は異なります。成熟したチャネルプログラムを運営する企業は、売上全体の30%以上をパートナー経由の案件から得ることを目標にするケースが多い一方、導入初期のプログラムは、30%を大きく下回るところから始めることもあります。
パートナー経由の案件と、パートナーが影響した案件の違い
2つのカテゴリーを分けるのは、関与の度合いではなく、起点が誰にあるかです。
パートナー経由の案件は、パートナーから始まります。パートナーが案件を登録する前、ベンダーはそのアカウントとの既存の関係も、パイプラインへの登録も持っていませんでした。一方、パートナーが影響した案件は、ベンダー(またはベンダー以外の起点)から始まり、その後パートナーが紹介、共同での商談への参加、技術的な知見の提供、成約への支援などを通じて貢献します。
どちらにも価値がありますが、測るものが異なります。パートナー経由の案件はパイプラインの創出を、パートナーが影響した案件は営業の加速を測ります。どちらか一方しか追跡しないプログラムでは、パートナーの貢献の全体像が見えません。
パートナー経由のパイプラインを育てる施策
健全な量のパートナー経由の案件を生み出すには、計画的なプログラム設計が必要です。
- 発掘を明示的に後押しする:パートナー経由の案件に限って、より高いマージン、より大きなリベート、ボーナスの販売奨励金(SPIFF)を提供します。ベンダーが創出したリードと同じ経済条件であれば、パートナーが見込み客の開拓に投資する理由はほとんどありません。
- 案件登録を簡素化する:登録プロセスでのわずかな手間でも、パートナーが申請をためらう原因になります。必須項目は最小限にし、モバイルからも申請しやすくして、迅速な承認を約束してください。
- 登録済みの案件を一貫して保護する:案件を登録したのに直販チームや他のパートナーに奪われてしまえば、パートナーは発掘をやめてしまいます。案件保護の徹底は、パートナーパイプラインを維持するうえで欠かせません。
- 顧客情報を共有する:アカウントマッピングのデータ、理想の顧客像(ICP)、テリトリーのインサイトをパートナーに提供し、ベンダーのターゲット市場の中で、より効果的に見込み客を開拓できるようにします。