パートナーエクスペリエンス管理(PXM)とは、ベンダーとパートナーの関係におけるあらゆる接点を、意図をもって設計し、測定し、継続的に改善していく取り組みです。「パートナーエクスペリエンス」がパートナーのベンダーとの協働に対する受け止め方を指すのに対し、PXMはその受け止め方を形づくるための業務上の規律を指します。パートナーエクスペリエンスを、カスタマーエクスペリエンスの管理と同じ厳密さで扱うべきものとして捉えます。
PXMのサイクル
PXMは、理解、設計、提供、測定からなる継続的なサイクルとして回していきます。
理解
まずは、パートナーが実際に何を体験しているのかを調べるところから始まります。
- ジャーニーマッピング:開拓から成熟段階に至るまでのすべての接点を書き出し、パートナーが摩擦や混乱を覚える箇所、あるいは感動する箇所を特定します。
- フィードバックの収集:アンケート、インタビュー、アドバイザリーボードからの意見、サポートチケットの分析を通じて、パートナーの感情や課題を明らかにします。
- 行動分析:ポータルの利用パターン、パートナーオンボーディングでの離脱ポイント、案件登録の中断率、パートナートレーニングの修了率を調べ、パートナーが明示的には報告しない体験上の問題を見つけ出します。
設計
理解の段階で得られた知見をもとに、体験を設計します。
- プロセスの再設計:パートナーのフィードバックと利用データに基づき、煩雑なワークフロー(案件登録、MDF(販促支援金)の請求、オンボーディングの手順など)を簡素化します。
- コンテンツの最適化:パートナー育成(イネーブルメント)の資料を組み直し、無関係なコンテンツを探し回らなくても、パートナーが必要な資料にたどり着けるようにします。
- ポータル体験の設計:パートナー向けプラットフォームのナビゲーション、パーソナライズ、パフォーマンスを改善します。
- コミュニケーションの計画:情報を必要なだけ届けつつ、負担にならない連絡の頻度とチャネル戦略を設計します。
提供
設計は、実行を通じて初めて現実のものになります。
- テクノロジーの導入:設計した体験を実現できるよう、PRM(パートナー・リレーションシップ・マネジメント)、ポータル、関連システムを設定します。
- チームの連携:意図した体験を一貫して届けられるよう、パートナー担当者、サポート担当、オペレーションチームにその体験を理解してもらいます。
- 変更の周知:改善点をパートナーに伝え、変更を把握して活用できるようにします。
測定
パートナー満足度の高いベンダーには共通点があります。年に一度の単発の調査に頼るのではなく、接点ごとに体験を測定しているのです。
Unifyr のパートナーエクスペリエンスを見るサイクルの最後には、体験が改善しているかどうかを評価する指標で締めくくります。
- パートナー満足度スコア(全体およびタッチポイント別)
- ネットプロモータースコア(NPS)の推移
- 運用指標(承認までの時間、解決までの時間、ポータルのパフォーマンス)
- パートナーエンゲージメントの推移(ポータルの利用、トレーニングへの参加、パイプライン(案件の見込み)の活動)
- パートナーリテンション率とパートナーの離脱
意図的な体験管理が重要な理由
PXMが重要なのは、パートナーエクスペリエンスが競争上の差別化要因である一方で、放っておいて自然に良くなることはないからです。意図的な管理がなければ、プロセスは複雑化し、システムは老朽化し、組織の変更によって不整合が生じるにつれて、パートナーエクスペリエンスは時間とともに劣化していきます。
マインドシェアの競争
パートナーは、複数のベンダーとの関係の中で、どこに時間を投じるかを選んでいます。最もよく管理された体験を提供するベンダーは、パートナーの注意と労力のうち、不釣り合いに大きな割合を獲得します。
リテンションの経済性
新しいパートナーを開拓してオンボーディングするコストは、既存のパートナーを維持するコストよりもはるかに高くつきます。PXMは、既存パートナーの満足度と関与を保つことで、その投資を守ります。
拡張性
パートナーエコシステムが拡大すると、個々のパートナー担当者の努力だけで体験を管理し続けることは難しくなります。PXMは、規模が大きくなっても一貫した体験を提供できるよう、仕組み、プロセス、基準を整えます。
フィードバックの活用
ベンダーは、アンケート、アドバイザリーボード、非公式な経路を通じてパートナーのフィードバックを集めています。PXMの規律がなければ、そのフィードバックは活用されないまま埋もれてしまいます。PXMは、フィードバックを行動へと変えるための枠組みを作ります。
組織の実践と成熟度
組織としての責任
PXMには、明確な責任者が必要です。組織によっては、パートナーオペレーションの一部として置かれることもあれば、専任のパートナーエクスペリエンスチームやパートナーマーケティングの一機能として置かれることもあります。どこに置かれるにせよ、責任者はチャネルセールス、パートナーマーケティング、育成、オペレーションにまたがるプロセスに影響を与える権限を持つ必要があります。
PXMの成熟度モデル
| 段階 | 特徴 |
|---|---|
| 事後対応型 | 正式なパートナーエクスペリエンスの測定は行われていません。問題は、パートナーが強く不満を訴えたときにのみ対処されます。 |
| 認識型 | 年次のパートナー満足度調査を実施しています。結果は確認されますが、体系的に改善につなげられていません。 |
| 管理型 | ジャーニーが可視化されています。主要な接点を定期的に測定しています。データに基づいて改善プロジェクトに優先順位をつけています。 |
| 最適化型 | 継続的なフィードバックのループがあります。リアルタイムで体験をモニタリングしています。部門横断のPXガバナンスがあります。新しいプログラムの施策すべてに、体験設計が組み込まれています。 |
即効策と構造的な改善
PXMの取り組みには、通常どちらも含まれます。
即効策(数週間で実施可能):
- 案件登録フォームの項目数を減らす
- ポータルのダッシュボードに、新規パートナー向けの「はじめに」ガイドを追加する
- 案件登録の承認とMDFの処理について、SLAを設定して公開する
- 保留中の案件登録とMDFの請求について、ステータスの自動通知を送る
構造的な改善(数か月の投資が必要):
- 利用データとパートナーのフィードバックに基づき、パートナーポータルを再設計する
- パートナーが自分に関係する内容だけを見られるよう、役割に応じたコンテンツ配信を実装する
- 主要な接点の指標を監視する、リアルタイムの体験ダッシュボードを構築する
- 部門横断のPXガバナンス評議会を設置し、体験データを四半期ごとにレビューして改善の優先順位を決める
よくある落とし穴
- PXMを一度きりのプロジェクトとして扱う:ジャーニーマッピングを行って資料を作成しても、継続的な測定と改善が伴わなければ、その取り組みはPXMとはいえません。この取り組みには、継続的な投資が欠かせません。
- デジタルの接点だけに注目する:ポータルは重要ですが、パートナー担当者との関係、サポート体験、プログラムの連絡の分かりやすさも同じくらい重要です。PXMは、デジタルの接点と並んで、人同士のやり取りも対象にしなければなりません。
- 調査して終わりにする:フィードバックを集めることは、フィードバックに応えるという暗黙の約束を生みます。意見を寄せたのに何も変わらなかったパートナーは、今後の調査に対して冷めてしまいます。
- ロングテールを軽視する:PXMへの投資の多くは戦略的パートナーに集中しがちですが、ロングテールのパートナー(全体としては大きな売上を占めることもあります)は、最も注目されないため、最も悪い体験をしていることが多いのです。