デジタルでのパートナー育成(デジタルイネーブルメント)とは、チャネルパートナーがオンラインやハイブリッドの購買環境で製品をマーケティングし、販売し、サービスを提供できるよう、必要なデジタルツール、プラットフォーム、コンテンツ、データを届ける取り組みです。従来のパートナー育成(イネーブルメント)を、デジタル領域にまで広げたものです。今日のB2Bの顧客の多くは、営業担当者と接する前にデジタルチャネルで情報を集め、比較し、場合によっては購入まで済ませています。デジタルでのパートナー育成は、この購買の実態に応えるための取り組みです。
デジタルでのパートナー育成プログラムの構成要素
デジタルでのパートナー育成プログラムは、顧客の購買プロセス全体にわたって、相互につながったリソースをパートナーに提供します。主な構成要素は次のとおりです。
- コンテンツとアセットのライブラリ: 営業資料、製品シート、導入事例、動画、SNSコンテンツを一元管理し、パートナーがいつでも取り出せるようにしたリポジトリです。効果の高いプログラムでは、パートナーが資料に共同ブランドを入れたり、地域市場に合わせて手直しをしたりできるようにしています。
- マーケティングオートメーションツール: ベンダーのPRM(パートナー・リレーションシップ・マネジメント)やTCMA(パートナー経由のマーケティング自動化)システムを通じて提供されることの多い基盤です。ベンダーから提供されるテンプレートとターゲティングデータを使い、パートナーがメールキャンペーン、SNSでの販促、デジタル広告を実施できるようにします。
- 販売ツール: ベンダーの手を介さずに、パートナーが案件を前に進めるために使うデジタルの見積もり、構成、提案ツールです。構成・価格設定・見積もり(CPQ)システム、ROI計算ツール、インタラクティブなデモが含まれます。
- トレーニングと認定のプラットフォーム: トレーニング管理システムやオンデマンドのトレーニング教材で、パートナーの営業チームと技術チームが、製品アップデート、競合に対する訴求ポイント、販売手法を常に把握できるようにします。
- 分析とレポーティング: キャンペーンの成果、パイプライン(案件の見込み)の状況、顧客の反応のシグナルを、パートナーが確認できるダッシュボードです。ベンダーも同じデータを自社のチャネル分析に取り込めるため、恩恵を受けます。
顧客の情報収集と比較検討への対応
顧客の購買行動は、デジタルへと恒久的に移行しました。複数の業界調査で、B2Bの顧客は営業担当者と話す前に、評価プロセスの相当部分をオンラインで済ませていることが一貫して示されています。ベンダーのパートナーがデジタルで顧客にアプローチできる体制になければ、顧客は態勢の整った競合を見つけてしまいます。
チャネルパートナープログラムにおいて、デジタルでのパートナー育成は特に次のような根強い課題に応えます。
- パートナーの能力のギャップ: 特に小規模なパートナーの多くは、自力で需要を生み出すための社内マーケティングやデジタル販売の基盤を持っていません。デジタルでのパートナー育成は、すぐに使えるツールとキャンペーンを提供することで、このギャップを埋めます。
- ブランドの一貫性: パートナーが独自にマーケティング資料を作ると、メッセージは次第にずれていきがちです。デジタルの仕組みなら、地域に合わせた調整は認めつつ、ブランドとメッセージの基準を徹底できます。
- 市場投入のスピード: 新製品の発表、価格改定、競合への対応は、対面による従来の伝達よりもデジタルチャネルを通じたほうが、速くパートナーに届きます。
- 測定可能性: デジタルツールはデータを生むため、ベンダーはどのパートナーがツールを使っているか、どのコンテンツが効果的か、どのキャンペーンがパイプラインを生んでいるかを追跡できます。パートナーのエンゲージメントやプログラムのROIを評価する際、憶測ではなく根拠に基づいて判断できるようになります。
成熟度、活用状況、測定
成熟度レベル
すべてのデジタルでのパートナー育成プログラムが、同じように発展しているわけではありません。次の成熟度モデルは、一般的な段階を示したものです。
| レベル | 特徴 |
|---|---|
| 基本 | パートナーポータルで、ダウンロード可能なPDFと製品情報を提供します。自動化も分析機能もありません。 |
| 発展途上 | 共同ブランド化が可能なコンテンツ、メールキャンペーンのテンプレート、アセット利用状況の基本的なレポートがあります。 |
| 確立 | TCMAプラットフォームが統合されており、CPQツール、認定の追跡機能を備えたトレーニング管理システム、キャンペーン実績のダッシュボードがあります。 |
| 高度 | AIを活用したコンテンツのレコメンド、パートナーと共有するインテントデータ、自動化されたナーチャリングのシーケンス、キャンペーンから成約までを一貫して追跡するクローズドループのアトリビューションがあります。 |
活用上の課題
デジタルツールの提供は必要ですが、提供だけでは十分ではありません。活用を妨げる主な障壁は次のとおりです。
- ツール疲れ: パートナーはすでに複数のベンダーのポータルを使い分けています。使い勝手を見直さないままツールを増やすと、利用率は低迷します。
- トレーニングの不足: パートナーがマーケティングオートメーションを使える状態にあっても、効果的に使いこなすスキルがないことがあります。育成プログラムでは、ツールとトレーニングをセットで提供する必要があります。
- インセンティブのずれ: デジタルツールを使うことと、売上の増加や利益率の改善とのつながりをパートナーが感じられなければ、活用は停滞します。ツールの利用をインセンティブのティアやMDF(販促支援金)の対象条件に結びつけると効果的です。
- コンテンツの関連性: パートナーの市場、業種、顧客のペルソナに合っていない一般的なコンテンツは、無視されがちです。効果の高いプログラムでは、パートナーの種類と顧客プロファイルごとにコンテンツを分けています。
効果の測定
デジタルでのパートナー育成プログラムを評価する際に役立つ主な指標は次のとおりです。
- ポータルへのログイン頻度とアセットのダウンロード率
- キャンペーン実施率(四半期に少なくとも1件のキャンペーンを実施しているパートナーの割合)
- パートナーが実施したデジタルキャンペーンからの、リードから案件への転換率
- 新製品の発表から、パートナーが最初のリードを創出するまでの期間
- ツールの使いやすさとコンテンツの品質に関するパートナーの満足度スコア