クロスセルとは、既存の顧客に追加の製品や補完的な製品を販売する取り組みを指します。チャネルでは、パートナーが顧客の最初の購入範囲を超えて取引を広げられる機会を見つけたときに発生します。同じベンダーの関連製品を追加することもあれば、パートナーエコシステムのメンバーが持つソリューションを紹介することもあります。
チャネルパートナーにおけるクロスセルの進め方
クロスセルは、既存の顧客との関係を土台にする取り組みです。新規顧客をゼロから獲得するのではなく、パートナー(またはベンダー)がすでに購入実績のある取引先の中から満たされていないニーズを探し出し、築いてきた信頼をもとに追加のソリューションを提案します。
チャネルにおけるクロスセルの場面
- 製品のアドオン: 中核となるソフトウェア基盤を販売したリセラーが、同じ顧客にセキュリティ、分析、連携などの関連機能を勧めます。
- 補完的なサービス: ベンダー製品の導入を担当したパートナーが、マネージドサービス、トレーニング、継続的な最適化を提案します。
- マルチベンダーのソリューション: あるベンダーのネットワーク機器を導入したSIerが、同じ取引先に別のベンダーのセキュリティソリューションを販売する機会を見つけます。
- 更新時の拡張提案: 契約更新の時期に、顧客の利用がすでに現行プランの範囲を超えている機能を含む、ライセンスの拡張や上位プランのサブスクリプションを提案します。
クロスセルの進め方
- 取引先の見直し。 パートナーは既存の顧客基盤を棚卸しし、ニーズが満たされていない取引先や、機能を十分に使いこなせていない取引先を洗い出します。
- ニーズの整理。 特定したギャップに対して利用可能な製品やサービスを当てはめ、追加のソリューションが実際の業務課題を解決することを示す根拠を組み立てます。
- アプローチ。 具体的な提案を携えて顧客に働きかけます。契約更新、予算の策定時期、事業拡大、あるいは直近のサポート案件で課題が表面化したタイミングなど、自然なきっかけに合わせるのが一般的です。
- 提案とクロージング。 提案書を提示し、顧客の購買プロセスに沿って案件を進めます。すでに関係ができているため、営業サイクルは新規獲得の場合より短くなるのが通常です。
既存の取引先での投資対効果の高い拡販
クロスセルは、チャネルの営業活動の中でも特に投資対効果の高い取り組みの一つです。顧客はすでにパートナーを知り、信頼しているため、ブランドを認知してもらう段階も、関係を築く段階も必要ありません。既存の顧客から追加で1ドルの売上を得るための獲得コストは、新規の顧客から同額の売上を得る場合よりも大幅に低くなります。
ベンダーにとって、パートナーによるクロスセルは既存の取引先におけるウォレットシェア(顧客の支出に占めるシェア)を広げます。ベンダーのプラットフォームの一部の機能しか使っていない顧客は、ベンダーの直販チームが手を伸ばせていない拡大の機会を示しています。顧客と定期的に接しているパートナーは、そうした機会を見つけて追求するのに適した立場にあることが多いのです。
パートナーにとっては、クロスセルによって顧客一社あたりの売上が増え、顧客の継続率も高まります。より多くの製品を利用している顧客は離反しにくいためです。さらに、他社には容易に置き換えられない関係を築けます。
支援、測定、そして注意点
パートナーのクロスセルの支援
パートナーは、理解していない製品をクロスセルすることはありません。既存の取引先での拡販をパートナーに求めるベンダーは、通常次の分野に投資する必要があります。
- 製品トレーニング: パートナーには、最初に販売した製品だけでなく、製品ポートフォリオ全体についての実践的な知識が必要です。
- ソリューション選定ツール: 顧客の課題を特定の製品に結びつけるための資料やツールです。パートナーポータルにある「ソリューション診断」は、顧客の入力内容をもとに製品を推奨する実用的な例です。
- クロスセルのインセンティブ: 既存の取引先に製品を追加した場合の販売奨励金(SPIFF)、ボーナスマージン、リベートの割り増しなどです。追加のインセンティブがなければ、パートナーはすでに知っている製品を売りがちです。
- 顧客インテリジェンス: 製品の利用データや顧客ヘルススコアをパートナーと共有すると、拡大の準備ができている取引先を見つけやすくなります。
クロスセルの成果の測定
| 指標 | 測定内容 |
|---|---|
| 顧客一社あたりの製品数 | 顧客一社あたりの、ベンダー製品またはSKUの平均数を時系列で追跡したもの |
| 拡大売上 | 既存顧客による追加製品の購入から生じる売上 |
| アタッチ率 | 複数の製品またはサービスを含む案件の割合 |
| クロスセル成約率 | クロスセルの提案のうち、成約に至った割合 |
注意点
- 押し売り: 顧客の真のニーズに基づかないクロスセルは、関係を損ないます。提案は実際の課題の解決につながるものでなければなりません。
- 製品知識の不足: 追加製品の価値を説明できないパートナーは、その製品を売ることができません。パートナー育成(イネーブルメント)が前提条件となります。
- インセンティブのずれ: パートナーの報酬体系が新規顧客の獲得しか評価しない場合、既存の取引先での拡大を追求する動機はほとんど生まれません。